林峰男チェロ・リサイタル(1999年11月21日)

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 芸術の秋にふさわしく今月はクラシックのコンサートが多いですが、仕事などでいけない場合がほとんどで、月に2つか3つくらいのペースがやっとです。「ムーの演奏会感想」もようやく10回を超えました。この調子で行くと、あと3回くらいかな。

 さて、今回は林峰男チェロ・リサイタルを聴いてきました。場所はシュガーホール。曲目は、ショパンの「序奏と華麗なるポロネーズ、ハ長調、作品3」、黛敏郎「BUNRAKU(文楽)」、プーランク「チェロ・ソナタ」、休憩を挟んでブラームス「クラリネット三重奏曲、イ短調、作品114」でした。

 林峰男というチェリストは、名前も初めてきく人でしたが、素晴らしい演奏でした。結構有名な人のようです。外国での活動が主なのでしょうか。音がすーっと出てきてよく響きますし、きれいな音色でした。ピアノ伴奏は平良久美。現在は沖縄に住んでおり県芸と琉大の非常勤講師だそうですが、沖縄出身ではありません。この人もなかなかうまいピアニストでした。よく一緒に演奏しているのかなと思わせるほど、チェロとの息もぴったりで、素晴らしい伴奏をしていたと思います。

 1曲目のショパンは、特にとりたてて言うほどの曲ではありませんでした。ポロネーズのところがショパンらしかっただけです。2曲目の「BUNRAKU」は、なかなかよかったです。チェロの独奏。文楽で使われる太棹三味線の演奏法をチェロに取り入れたもので、黛敏郎の器楽曲の傑作だそうです。もちろん、初めて聞きました。

 三味線のばちでたたいて出すような「バチン」という(しゃれではありません)感じの音が、ピチカートでうまく表現されてました。こういう無伴奏の曲になるとチェロの表現力は素晴らしいです。最低音からバイオリンと同じくらいの高音部まで使い、純日本風の音楽世界を作っていました。少し響きすぎるシュガーホールの音響も、無伴奏の音楽にはぴったりです。

 3曲目のプーランクのチェロ・ソナタもグッドでした。彼にはクラリネット・ソナタもあります。クラリネット・ソナタには、下から上へなめらかに流れていく旋律が多くあり、フルート・ソナタにもそんな旋律があるので、彼の作曲の特徴ではないでしょうか。私はこの「流れるような旋律」が大好きで、クラリネット・ソナタは私の大好きな曲の一つです。チェロ・ソナタにもやはり第1楽章に、このような旋律があり、ハハーンとつい頷いてしまいました。

 プログラムによりますと、プーランクは弦楽器が苦手で、チェロ・ソナタはピエール・フルニエに捧げられていますが、わざわざ彼に得意分野ではないことを伝えているそうです。確かに少し弦楽器の曲風でないような感じも受けましたが、なかなかよい曲だと思います。ソナタには珍しく4楽章という大きな構成。2楽章の冒頭、ピアノのコラールとそのあとチェロが弱音で演奏する旋律がとても印象に残っています。4楽章は、結構テクニック的に弾きごたえのある楽章で、力の入った演奏でした。

 最後は、ブラームスのクラリネット三重奏曲。この曲もクラリネットの室内楽では名曲中の名曲です。今回のクラリネットは沖縄県立芸大の横井操さんでした。ブラームスのクラリネット曲は、CDとかで名演を聴くことが多いだけに、生演奏で感動するのはかなり難しいと最近思います。もちろん、横井さんのクラリネットはうまいのですが、ブラームスの音楽は、完璧な演奏+アルファがないと感動できないような気がします。+アルファは何なのでしょうか。

 冒頭のチェロは最高でした。いきなりチェロがあの渋いすすり泣くようなメロディを弾き始めたときにはやったーと思ったものです。しかし、その後何となくクラリネットと他の楽器とのアンサンブルがしっくりいっていないと思ったのは、私だけでしょうか。それまでチェロとピアノは、うまくアンサンブルをしていたと思うのですが、ひょっとするとトリオというのは、アンサンブルの形態としては大変難しいのかもしれないと思いました。

 アンコールは、シュガーホール音楽監督中村透先生編曲の「てぃんさぐの花」をトリオで、その後フォーレの「夢のあとに」、ドボルザークの「我が母の教えたまいし歌」が演奏されました。3曲とも素晴らしい演奏でよかったです。全体の感想としては、大変よい演奏会でした。

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