沖縄舞台芸術振興協同組合(SAPS)が主催した「祈り-inori-」を見ました。この団体は県内の演劇、演奏家、バレエなどの人たちが集まった組合です。メンバーには私もお世話になっている演奏家がたくさんいらっしゃいます。
同組合のメンバー構成からもわかりますように、その事業内容は、単に演奏だけではなく、演劇やバレエも加味した総合的なスタイルです。今回の「祈り」は、その特徴を活かした公演だったと思います。
第一部は、崎浜秀彌がフィル・ボスマンスの「喜びを忘れないで」という詩を朗読しながら、舞台上を動き回る。その合間を縫って祈りをテーマにした、いろいろな曲の演奏、独唱、合唱、バレエが繰り広げられる、という演出でした。普段、器楽しか聴かない私には、いろんな芸術が居ながらにして楽しめるという点で面白かったです。また「祈り」というテーマがあることによって、単なるパフォーマンスに終わらないという点でも、この演出は成功だったと思います。
第2部は、「静かな抗議」と題され、仲里友豪詩集「コザ・吃音の夜のバラード」から「予兆」、「石」、「沈黙の渚」、「ボク零歳・黒焦げんぼ」の4つの詩を、上里ますみが朗読。合間にフォーレの「小ミサ曲」、ペルゴレージの「スタバト・マーテル」が合唱で、チャイコフスキーの胡桃割り人形から「こんぺい糖の踊り」がバレエで上演されるというものでした。
1部と違い、合唱は薄い幕の向こうで歌っていました。仲里友豪の詩は初めてでしたが、かなりの「主張」をもっており、詩の「激しさ」と合唱の「美しさ」がとても対照的でした。また、「黒焦げげんぼ」と「こんぺい糖の踊り」は、コミカルな朗読(詩の内容はこわい!)とバレエの動きが合っていて面白かったです。
ひとつだけ残念なのは歌曲や詩のテキスト(歌詞)がない、ということです。今回は歌曲も多いので全部は無理でしょうが、少なくとも中心になるものはつけて欲しいです。
ちょうどこの感想を書いている今日は、6月23日(沖縄県の慰霊の日)です。この時期、沖縄は梅雨が明け、真夏になります。真っ青な空と照りつける太陽。56年前、こんな日差しのもとで悲劇的な戦闘があったなんて・・・。私にできることは、亡くなったすべての方に思いをはせ、二度とこのような戦争が起こらないことを「祈る」のみです。