一昨年も沖縄に来た「チェコ国立ブルノ歌劇場」が今年もきました。95年から2年ごとに来日しているようです。今回はモーツァルトの「魔笛」です。
今回も前回の「カルメン」同様、素晴らしい舞台でした。超一流のオペラ劇場ではないですが、オーケストラさえ滅多にこない沖縄で、このようなフル・オペラが8千円で見られるのですから、こんなよいことはありません。
じつは、「魔笛」は、ストーリーが少し「説教」くさくて、そんなに好きではないのです。去年、沖縄県立芸大の「魔笛」を見ましたが、そのときの演出は説教臭さを強める方向だったので、少々うんざりしました。それで今回はパスしようかなと思ったのですが、とにかく「パパゲーノ」は歌・役どころとも大好きですし、「夜の女王」の人間離れした高音域をどう歌うのかなど、興味もあり今回も行きました。
結果的に行ってよかった、ということです。さすがに手慣れたもの、目新しさはないですが、万人が楽しめる演出だと思います。魔笛の「童話」的な面はもちろん楽しめますし、「説教」的な面も、押しつけがましくなくて、それなりに「重さ」が感じられました。
まず、舞台の転換や音楽のテンポが全体に早めな感じで、これがいい印象を与えています。また、アリアの時に、ソリストの周囲で必ず何かが動いていて(踊りや他の人の動きなど)、それがアリアの単調さをカバーし、または、より効果的になるように仕組まれていることです。
そして、これは演出だけではなく、ソリストの問題でもありますが、それぞれの個性、役割が、県芸のオペラと比べると、明確でした。要するに、悪役は悪役らしく、僧侶は僧侶らしく、可憐な乙女はそれらしく。また、「笑い」をとる場面が多かったこと。一例:パパゲーノが首に縄をかけて自殺しようと見せかける場面で、「いち・に・さん」と日本語で数える。
そういえば、いつかテレビで見たショルティ指揮ウィーン国立歌劇場の「魔笛」で、パパゲーノが「鈴」の歌(?)で、舞台から降りて、ショルティが弾くチェレスタの伴奏で歌っていました。お客さんが大喜びだったのはもちろんです。
今回のソリストでは、ザラストロとパミーナ、パパゲーノがいい雰囲気でした。タミーノの声は若干非力。夜の女王は残念なことに調子が悪そうでした。合唱はすごくよかったです。
舞台はかなり簡素ですが、ザラストロの宮殿などで、円柱が奥に向かってずらっと並べられ、それがだんだん背を小さくして、遠近法で奥行きを表現しており、2階からもその奥行きがよく感じられるものでした。
もちろんオーケストラも問題なし。開幕前の金管五重奏も前回同様、ロビーで皆さんを楽しませていました。今回は、本場物の「魔笛」を楽しむことができました。ブルク国立歌劇場、再来年にまた来日するのでしょうか。今度は何をやってくれるのかな?ちなみに、95年「ドン・ジョバンニ」、97年は「トスカ」だったようです。次は、「魔弾の射手」とか「ニュルンベルグのマイスタージンガー」なんかやってくれないかな・・・。「椿姫」か「ボエーム」でもよいけど。