司馬遼太郎のエッセイ集第6巻を読みました。1972年4月~1973年2月までのエッセイが入っています。
特に興味深かったのは、日本軍の戦車の話。司馬遼太郎は学徒動員で満州の戦車隊に配属され、終戦時は幸運にも関東地方にいたそうです。おかげで私達は彼の文章を読むことができる。
この第6巻には、「戦車・この憂鬱な乗り物」、「戦車の壁の中で」、「石鳥居の垢」と戦車搭乗兵だったころの話が3つもあります。第2次大戦当時の外国戦車と比べて、比較にならないほど弱かった日本軍の戦車や、それを運用する本人や兵隊たちのエピソードなど。
びっくりしたのは、当時の兵隊は、自分たちの戦車は弱いと知っていて、それに対する不満を直接口にすることがなかった(できなかった?)ということです。その当時の日本という国の異常なところが、ここにも見えるということでしょうか。
また、日露戦争を中心に描いた長編「坂の上の雲」を書き上げた当時の彼は、その「あとがき」や、「日露戦争の世界史的意義」など、日露戦争と太平洋戦争の戦争指導者の違いを指摘したりしています。
他に興味深かったのは、画家ゴッホが、一途な性格からくる世間とのいろいろな衝突の中から、絵を描くようになった経緯を明らかにした「ゴッホの天才性」。