2013年2月アーカイブ

 街道をゆく11 肥前の諸街道  1年ぶりの「街道をゆく」は、11 肥前の諸街道です。週刊朝日1977年4月~8月連載。内容が大変豊富でした。

 「蒙古塚・唐津」では、まず蒙古塚を見に行くことで、文永の役(1274年)や、弘安の役(1281年)の蒙古軍や元帝国の仕組みを考えます。

 「松浦」という地名は、魏志倭人伝に出てくる末羅国のこと。「羅」という文字は、国をあらわすことばではなかったかと考え、釜山近辺に「加羅」があり、のちにカラ、韓、唐に発展してゆくとして、北九州と古代朝鮮の関係を考える。

 平戸では、オランダ商館や英国商館のあとを訪ね、長崎以前の平戸が、ポルトガルやオランダなどとの海外貿易の一中心であった時代を考える。

 1600年ウイリアム・アダムス(三浦按針)の載ったオランダ船リーフデ号が日本に漂着。慶長14年(1609年)平戸にオランダ商船入港。その年から1641年に長崎出島に移されるまで平戸は、長崎以前のオランダ貿易の拠点だった。また、平戸は江戸時代山鹿流兵学の家元で、吉田松陰もこの平戸で兵学を学んだ。

 明末の海賊、王直は、平戸に本拠地を置き、平戸が戦国初期から江戸初期まで101年間海外と接触した契機となった。

 三浦按針の1年半に渡る苦難の航海。家康との関係。東京八重洲の地名は、三浦と一緒に来たオランダ人ヤン・ヨーステンの名前から→耶揚子(やよす)→八重洲となったことなど。

 「横瀬・長崎」では、平戸の松浦氏がキリスト教に改宗しないので、ポルトガルと争いになり、ついにポルトガルは平戸から出て行く。最初は、横瀬、次に福田、最後に長崎と移転。

 当時長崎を支配していたのは大村家の家来の長崎氏。長崎は1570年に開港。1580年にはイエズス会に長崎を寄進! この頃長崎は西洋の町になっていた。秀吉の切支丹禁制により終了。もしかしたら長崎はマカオのようになっていたかも。

 この時代から江戸時代にいたるまで、日本では金と銀とでは金が安かったので、西洋諸国は、日本から安い金を持ち出して巨利を得続けていたという話。

 そのほか、南蛮船カラヴェラ船(3本マストの船)の衝撃は、ペリーの黒船と匹敵する。1609年最後のポルトガル船の悲劇。南蛮流外科を日本にもたらしたルイス・アルメイダ。傷治療と消毒、蒸留酒の関係。今で言う赤十字的な慈恵院の存在。1620年にすべてのキリシタン遺構・遺物がこわされ、長崎には南蛮時代のものがなくなった、などなど。

城塞

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城塞  司馬遼太郎の「城塞」を読みました。戦国4部作の最後だそうです。

 関ヶ原が終わり、100年も続いた戦国時代が終わりを告げるころ、徳川家康が政権安定のため、豊臣家を滅ぼす大坂冬の陣(慶長19年、1614年)、夏の陣(翌年)を描いた作品。

 家康は、徳川幕府が不名誉な評価を受けないために、有名な「国家安康」の鐘の文字や、豊臣家内部の切り崩しなど、あらゆる手段を講じて、豊臣家から戦をしかけるようにして、ついにその目的を達成。

 ヒステリー症状だったという淀殿、その過保護な育て方のもと、全くといっていいほど大阪城から出なかった秀頼。家康は大阪城内部にたくさんの内通者を置き、情勢を探りながら、慎重に作戦を練った。対して豊臣家では淀殿とその取り巻きは、情勢判断が全くできず、簡単に家康に操られて戦に入っていく。 

 それでも冬の陣では難攻不落の大坂城にこもり、ほとんど損害もなかった。そのまま籠城していれば何らかのチャンスがあったかもだが、家康の策略にはまり簡単に和睦してしまい、外堀やその城壁などをすべて取り壊されてしまう。

 夏の陣では、真田幸村や後藤又兵衛など有名な武将が果敢に戦うも、圧倒的な兵力差には勝てず、散っていく。この本を読むまでは、淀殿らの最後は天守閣炎上の時と思っていたが、実は、最後まで家康の情けを信じて、横の倉庫に移動して立てこもっていたそうだ。もちろんそこで最後を遂げるのだが、戦国時代の幕引きとしては情けない。

 上・中・下3巻のこの本は、豊臣家を追い詰めていく、徳川家康のしたたかさ、賢さ、すごさが印象的でした。このような人間は日本人にはあまりいないような気がします。今までは判官贔屓で負けた豊臣家に同情していましたが、250年も平和を維持できた徳川体制は、ある意味すごかったのだと思います。

 また、豊臣家がヒステリーの淀殿に操られて滅亡した過程は、日本が太平洋戦争に突入し、無謀な戦いを繰り返して、最後に広島・長崎への原爆投下で降伏するまでの状況と似ているとも言え、考えさせられました。

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