大城立裕 小説「琉球処分」

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大城立裕 小説「琉球処分」  大城立裕の小説「琉球処分」を読みました。明治8年から12年にかけて行われた琉球王国を正式に日本支配下に組み入れる日本政府の活動、いわゆる「琉球処分」の描写です。読んでみて非常に考えさせられました。

 松田道之を実務者とした日本政府側の動きや、琉球側の受け入れ派、反対派のいろいろな動きを見事に浮き彫りにしています。ただ、すでにペリーらの黒船は日本に先立って琉球にきていたのに、琉球側の当時の考え方は、こんなにも国際情勢や技術発展などに疎かったのか?と感じました。著者が琉球側描写を単純にしすぎている感じはします。

 いずれにせよ、今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」と同時期で、比較して見ることで、日本全体では幕府、各藩とも最新の知識や技術を仕入れることに躍起になっていた時期、琉球側は旧態依然として、ほとんど何の対策も行っていなかったことは実感しました。

 その時期の中国や朝鮮が陥っていたのと同じことだったのでしょう。あきらかなのは、日本は江戸時代で身分制度はあっても、士農工商の各身分ごとに、文化や知識が蓄えられてきたのに、中国、朝鮮、琉球は民衆の側に、この面でほとんど何の力もなかったことでしょうか。

 そして、「琉球処分」により完全に日本国に組み入れられた沖縄は、いろいろな面の上からの押しつけに、唯々諾々と従わざるを得ないこととなり、最終的には、太平洋戦争末期の沖縄戦の悲劇まで招いてしまったと感じました。

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